ここまでの調査結果
優占種と種の増減
これまでに,863の1kmメッシュの情報が集まり,153種が記録されました。・優占種
記録メッシュ数が多かったのはヒヨドリ,ハシブトガラス,シジュウカラでした。全国鳥類繁殖分布調査の結果とも,大きな違いはありませんでしたが,全国で一位のウグイスが入っていないこと,スズメやツバメといった身近な鳥が上位に入っている点が違っていました。また,全国では上位に入っていたホオジロが入っていないのも,草地環境が少ない東京の特徴と思います。
東京 | 全国 | |||
種名 | メッシュ数 | 種名 | メッシュ数 | |
ヒヨドリ | 1061 | ウグイス | 1181 | |
ハシブトガラス | 1041 | ハシブトガラス | 1166 | |
シジュウカラ | 1039 | ヒヨドリ | 1148 | |
スズメ | 970 | キジバト | 1133 | |
キジバト | 955 | シジュウカラ | 1117 | |
ムクドリ | 910 | ホオジロ | 1058 | |
ツバメ | 816 | カワラヒワ | 1050 | |
メジロ | 784 | キビタキ | 1030 | |
カワラバト | 711 | コゲラ | 1027 | |
カワラヒワ | 618 | ハシボソガラス | 1003 |
・1990年からの増減
1990年代と今回行なった現地調査の結果をもとに,記録の有無に基づいて増減を見てみました。増加(分布を拡大)していた種としては,アオサギ,ダイサギといった大型の魚食性の鳥,ガビチョウホンセイインコといった外来鳥,キビタキ,アオバト,オオルリといった森林性の夏鳥,エナガ,アオバト,アオゲラといった森林性の鳥といった共通点がありました。これらは全国鳥類繁殖分布調査での傾向と一致していました。
減少(分布が縮小)していた種は,少なく,イワツバメ,セグロセキレイ,オナガ,ヒバリ,ホオジロの5種があげられました。
増加 | 減少 | |||||||
種名 | 1990 | 2010 | 増加率 | 種名 | 1990 | 2010 | 減少率 | |
ガビチョウ | 6 | 98 | 1533 | イワツバメ | 45 | 26 | -42 | |
アオサギ | 6 | 67 | 1017 | セグロセキレイ | 32 | 19 | -41 | |
キビタキ | 14 | 94 | 571 | オナガ | 123 | 83 | -33 | |
アオバト | 11 | 57 | 418 | ヒバリ | 25 | 17 | -32 | |
ホンセイインコ | 15 | 67 | 347 | ホオジロ | 80 | 60 | -25 | |
アオゲラ | 21 | 87 | 314 | |||||
エナガ | 24 | 83 | 246 | |||||
ダイサギ | 8 | 25 | 213 | |||||
オオルリ | 21 | 62 | 195 | |||||
アカゲラ | 10 | 28 | 180 |
興味深い分布の変化
・森林性の鳥の分布拡大分布の増減の上位種にも入っているキビタキ,エナガ,そして優占種の上位5位に入っているメジロの分布を示しました。いずれも,今回新たに記録された青い丸が多いのがわかります。また,メジロは都心部へと分布を拡げているのがわかります。
・都心部へと向かうハシボソガラス
東京のカラスというと,ハシブトガラスなのですが,これからはそうもいえなくなるかもしれません。都心を包囲するようにハシボソガラスの分布が拡がってきていることがわかりました。逆に山の方はいなくなっているメッシュも目立ちました。山間部の畑などが減って生息地が限られてきているのでしょうか?
・都心部で増えているスズメ
スズメの減少が話題になりました。減少原因として,都市化による食物の減少がその原因の1つとしてあげられていましたが,それとはちょっと異なる結果が示されました。最も都市化がすすんでいる都心部では1990年代と比べて個体数が増加しており,それ以外の地域では減少していたのです。原因はよくわかりません。来年以降,情報を集めつつ,明らかにしたいと思います。
・これまで書いた記事
バードリサーチのニュースレターで以下の記事を書きました。リンクしてありますので,ご覧ください。
V字回復を遂げた東京の樹林性の鳥 バードリサーチニュース2021年8月: 1
都市鳥でもやはり郊外の方が好適? バードリサーチニュース2021年3月: 3
緑地の孤立化が影響? 減少続く東京のコジュケイ バードリサーチニュース2020年4月: 3
東京都鳥類繁殖分布調査 2017年−2019年までの成果 バードリサーチニュース2020年3月: 2
セッカとホオジロの分布変化 バードリサーチニュース2019年2月: 1
繁殖分布調査をレッドリストに活かす 〜東京都の事例〜 バードリサーチニュース2019年1月: 2
伊豆諸島のスズメ目の昔と今 バードリサーチニュース2018年8月: 2
内陸へ拡がるイソヒヨドリ・分布拡げるガビチョウ・ホンセイインコ バードリサーチニュース2018年5月: 2
東京の鳥の1970年代からの変化 バードリサーチニュース2018年1月: 1
林の鳥が多い東京と開けたところの鳥が多い水戸 バードリサーチニュース2017年10月: 1
東京の島も法則に則っているか バードリサーチニュース2017年9月: 4
増加するホンセイインコやガビチョウ。スズメも都心部で増加 バードリサーチニュース2017年6月: 1
東京都鳥類繁殖分布調査にご参加ください バードリサーチニュース2017年2月: 2