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分布調査の結果に基づきまとめられた論文とその内容


植田睦之・河村和洋・奴賀俊光・山ア優佑・山浦悠一 (2024) 日本の越冬期の鳥類の分布の変化と気候変動の影響.Bird Research 20: A21-A32.

 全国鳥類越冬分布調査の結果をもとに越冬期の鳥類相の変化とそれに影響する要因について検討した研究です。まず繁殖分布調査のデータと比較すると,越冬期の鳥類は繁殖期の鳥類と比べてより分布を北側へと拡げていることがわかりました。繁殖期も分布は拡大しているのですが,分布域内の空白メッシュを埋めるような拡大で,北への拡大は顕著ではありませんでした。
 さらに,越冬期は低温や積雪が分布の制限要因になると考えられる非森林性の地上採食の鳥類や,浅水域で採食する種,空中採食性の種は分布全体を北上させており,樹上,水中,海で採食する種も分布の北端を北上させていることもわかりました。


図 越冬期における各種鳥類の1980年代から2010年代にかけての分布の位置の変化と採食特性との関係.0は分布に変化がないことを示し,プラスは分布が北上していることを,マイナスは南下していることを示す.〇が各種の値を示し,■が平均値とバーが95%信頼区間を示す.赤で示したものは有意に北に分布を変化させていることを示す.

 特に空中採食性の種は夏鳥の種に多いなど,寒さに弱いと種だと考えられますが,こうした鳥たちは1980年代からの気温の上昇に合わせて分布を北上させていて,気候の緩和に強く反応していると考えられました。地上採食性の種などそれ以外の種も気温にあわせて変化していましたが,気温の変化ほどには分布を北上させていませんでした。冬期の気候条件の厳しさが制限要因として強く働かない種は,温度に応じて分布を変化させないのか,それとも分布変化の反応が遅れていて,今後追随してくるのか,今後の長期的な調査であきらかにしたいと考えています。
 この調査で明らかにできたのは分布の変化で,個体数の変化は明らかにできていません。分布が拡がった種には,ガン類のように個体数も増えている鳥から,カモ類のように分布は拡がっているものの個体数は減っているものもいます。乾田化など環境の変化や少雪がそれを助長することなどがその原因として考えられるので,今後はモニタリングサイト1000の結果なども使って,気候変動が個体数に与える影響についても明らかにしていきたいと考えています。

三上修 (2023) 鳥類繁殖分布調査の第2回(1997-2002)と第3回(2016-2020)の間にみられるスズメの減少.Bird Research 19: A21-A30.

 1997-2002年と2016-2020年の繁殖分布調査の記録を比較して,スズメがどういう環境でどれくらい減少しているかを推定した研究です。これらの調査を比較した結果,個体数の減少が大きい調査地は,農地面積が広く気温が高い傾向がありました。



図 調査地の気温と田の面積とスズメの増減との関係.

   しかし,その減少は,土地利用の変化では説明できませんでした。これらの調査地で個体数の減少が大きい理由として,生息適地でもとの個体数が多く,同じ割合で減少していても減少数が大きいこと,土地利用の変化を伴わない形で餌生物が減少していること,建物の建て替わりによって隙間のある建物が減少するなど営巣場所が減少していることなどが考えらます。そしてこの18年間でスズメの個体数は62.1%に減少していると推測されました。

植田睦之・山浦悠一・大澤剛士・葉山政治 (2022) 2種類の全国調査にもとづく繁殖期の森林性鳥類の分布と年平均気温.Bird Research 18: A51-A61.

 全国的な鳥類調査「全国鳥類繁殖分布調査」および「モニタリングサイト1000」のデータをもちい,繁殖期の森林性鳥類の生息分布の指標となる気温(気温指数)を明らかにしました。両調査から計算された各種鳥類の気温指数はよく一致していて,信頼性の高い値が得られていると考えられます。



図 各種鳥類の記録された地点の年平均気温の全国鳥類繁殖分布調査とモニタリングサイト1000での比較.種の順番は左から,全国繁殖分布調査における年平均気温の中央値が低い順.個体数で重みづけした値を示した.

 この気温指数は,今後さまざまな研究の基礎情報として利用可能なものなので,こちらからダウンロードすることができるようにしました。すでに Katayama et al. (2023) の研究で利用されています。


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